私は昨年の春、神戸で開催された劇の公演を見に行って、照明設備の存在価値が大きく一変した。その時の公演に使われていた正銘の種類、質ともにこれまで見た劇とは一線を画していた。その劇は照明の色を変えることで、ほかの舞台装置の役割も大きく変わっていた。例えばその照明が青、白を中心に舞台を染めた際には、舞台の中央に作られた物体が氷と雪に囲まれた村の洞窟の役目を果たし、また同じ劇の別の時、照明が舞台を深緑に染めた際には、同じ物体が歴史溢れる森の遺跡の役目を果たすことになった。照明一つで、舞台にあった同じ物体が完全に存在意義を変える瞬間であった・本来私は照明の使い道とは、舞台の登場人物が感情的になった際に真っ赤になり、逆に気持ちが沈んだ際に青色になる、また妬みの際には緑、と感情の動きか、はたまた夜に暗い青、夕方にオレンジ色の照明、というような限定的な使われ方しかしていないと思い込んでいたが、その劇を通して、照明が世界観の大筋を担うことを大いに実感した。
演劇の質が変わって見える照明
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